かさ (著:大田大八)
女の子が父親に傘を届けに行く物語。女の子がひとりで身の丈に合わない大きな黒い傘を抱えて歩いた道を、大きな黒い傘の相合傘で帰ります。帰路、閉じた赤い傘を持つ父親に、なんだかほのぼのします。
初回の「アンジュール」と同じ「文字の無い」絵本です。文字の無い絵本を子どもに読み聞かせる時は、語り手が絵を読み、言葉を紡ぐので、読むたびに語り口や表現が変わります。聴く側の子どもも、語り手の即興性に反応し、絵から読み取った自らの言葉を語りだす、このやりとりが楽しいです。
モノクロの風景の中で、女の子の持つ赤い傘がパートカラーとなっています。1993年に公開されたモノクロ映画『シンドラーのリスト』で描かれた収容所に送られる人の列にいた女の子の赤いコートを思い出しました。でも、原爆の被爆者でもある作者からは、ありきたりな日常の風景にある『赤』に『平和』を感じます。ちなみに、この絵本は1975年初出ですが、50年経ってもまったく古びていません。
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